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2020年08月02日

理系は視野を広くし技術職以外も就職先候補として考えるべき

研究開発などの技術職だけが理系の進路ではない!

 ども勉三です。いまや理系は大学院に進むのが圧倒的多数派になりました。そしてその先の進路としてはメーカーやインフラの技術職(研究職、開発職、生産技術職などの理系でなければなれない職)になる人が殆どなのではないでしょうか。

 かくいう勉三も小さい頃から研究者になりたいと思い、大学では理系に進み、大学・大学院時代は研究者になることだけを考えていました。そうして実際にメーカーで研究者になったのですが、「これ、本当に自分のやりたいことなのかな?」と疑問に思い始め、結局は研究職を辞めてコンサルに転職しました。

 これを聞くと全く違う仕事に変えたと思われるかもしれませんが、勉三はそうは思っていません。むしろコンサルになってからの方が、研究者としてやりたかったことが実現できている感すらあります。今回はこのあたりの事情を説明するとともに、理系の人には「いわゆる技術職だけが理系の強みを活かせる進路ではないよ。本当にやりたいことや向いていることは別の仕事かもしれないよ」ということをお伝えしたいと思います。

今の企業研究者の役割は昔と大きく変わってきている

大ヒット製品の鍵は「要素技術」から「組み合わせとマーケティング」の時代へ

 勉三がそもそもメーカーの研究職の道を選んだのは、発明や特許によってヒット製品を生み出し、社会に貢献したいというのがあったからです。おそらく他の人たちも同じ理由かと思います。

 そこには、昔のNHKのプロジェクトXなどで出てきたようなヒット製品を生み出した企業研究者の姿がイメージとしてありました。ところが今はその頃とは大きく時代が変わりました。

 例えば iPhone を例にとってみましょう。日本の電機メーカーのエンジニアの方がインタビューか何かで語っていたことなのですが、(発売当時の)iPhone は技術的には別に凄いわけではなく、日本の電機メーカーでも作れた製品なのだそうです。

 ではなぜ日本の電機メーカーは iPhone を生み出すことができなかったのでしょうか。ここに現在のヒット製品開発の難しさがあります。昔は要素技術の水準を高めていけばヒット製品になっていました。ところが今は技術を高めるのではなく、いかに組み合わせ、いかに売るかが鍵となっているのです。

 iPhone でいえば、「インターネットに接続できる携帯」も「タッチスクリーンで操作するデバイス」も技術的には他のメーカーでも作れたし、実際に作っていました。ところがこれらを組み合わせてあのような製品を作ることは他社にはできませんでした。また、仮にできたとしても、アップルの持つブランド力やマーケティング力がないと同様には売れなかったでしょう。iPhone は要素要素の技術力ではなく、組み合わせとマーケティングで大ヒットした製品なのです。

企業研究職は外から新技術を仕入れてくるのが仕事に

 もちろん、今の時代でもとてつもない新技術が出れば、それだけで大ヒットすることでしょう。ところがそういった新技術が生まれるチャンスは減少しています。また、新技術が生まれるとしても、それは日本のメーカーのような大企業の研究所ではなく、大学の研究室やベンチャーであることが多くなっています。

 例えばわかりやすいのは自動運転技術などです。自動運転に必要なAIなどの新技術は、自動車メーカーの研究所には少なく、十分にノウハウもありません。外から仕入れてくるしかありません。また、例えば製薬企業が治療用のアプリなんかを開発しようと思ったら、自分たちではできないので他の業界の企業と組む必要があります。

 そこでメーカーの研究者の人たちは、大学やベンチャーと共同研究をすることが多くなっているのが現状です。共同研究といえば聞こえはいいですが、要は彼らの技術にお金を出して、自分たちが利用する権利を得るということです。大学やベンチャーは技術はあるがお金がなく、大企業はお金があるが技術はないので、ウィンウィンの関係だと言えます。

 これはこれで面白いのですが、メーカーの研究者の仕事が、皆がイメージするような「白衣や作業着を着て実験」から徐々に離れていき、投資判断とプロジェクトマネジメントが主な業務になってきているのです。

 実際、勉三がメーカー研究職をしていた頃、実験しているのは業務時間の5%もなかったと思います。殆どはパソコンでメールの対応をしたり、PowerPoint で提案資料を作ったり、Excel で数値を分析したりしていました。これってコンサルと非常に近いんですね。なので、研究職からコンサルに転職してもそれほどギャップは感じませんでした。

大企業はサイロ化が進んでおり、その中の1研究者ができることは小さい

 もう1つ問題は今の大企業は、部署ごとにそれぞれ別会社ともいえるぐらいに分断が進んでいるということです。このような状態を英語でサイロと言います。研究部門と営業部門とが一緒にプロジェクトを進めるだけでも困難ですし、研究部門の中でも異なる部署と一緒に仕事をする時は、いちいち上の許可を取らなければいけません。

 アジャイル開発という言葉が世に出てかなりの年数が経ちますが、今の時代は個別の部門が別々に仕事をしていてはヒット製品を生み出すのは非常に難しいです。研究、設計、開発、生産、営業、マーケティングなどが一緒になり、早めにプロトタイプを作り、市場性やお客さんの反応なども見ながら徐々に改良して最終製品を作っていくというのが、特にIT業界などでは当たり前になっています。

 ところがこのアジャイルアプローチを日本の昔ながらの大企業でやろうとするとまず失敗します。皆がそれぞれの所属部門の立場で働き、その立場で考えているので、全体最適が取れないんですね。

 また、他の部門を動かそうと思ったら、それだけで上に話を通さないといけないので提案や調整に多大なエネルギーを取られることになります。今の企業研究職はこの提案と調整に多くの時間を割いています。これでは「組み合わせ」が大事な時代にヒット製品は生み出せません。

コンサルやベンチャーキャピタリストの方が、研究職よりインパクトのあることができる

 そうして考えると、理系だからといって研究職や開発職などの技術職に進むことが果たして正解なのか難しいところです。もし本気で研究したいのであれば大学に残るという選択肢はあります。ただし、お世辞にも高学歴に見合う待遇とは言えませんし、大学の研究者も予算獲得で常に誰かの顔色を伺いながらの仕事であり、昔の大学の研究者とはだいぶイメージが異なるのは同じことです。

 もし、あなたが「大学に残って薄給で研究するほどの気持ちはないが、せっかく理系に進んだのだし、何か専門知識や論理的思考力を生かして、新製品やサービスを生み出すのに貢献したい」と考えているのであれば、勉三としてはコンサル、ベンチャーキャピタル、投資銀行などをお勧めします。

 理由は上でも少し述べましたが、今の企業研究職は、投資判断とプロジェクトマネジメントが主な仕事になってきています。であれば、コンサル、ベンチャーキャピタル、投資銀行などと本質的に仕事が違うわけではありません。

 それでいて企業の中から研究者としての立場で仕事をするより、外からの立場の方が大きなインパクトを生み出せるということは珍しくありません。

研究職よりコンサルの方が技術で価値を生み出せることも

 例えば、あなたがあるメーカーの研究職で、人工知能や機械学習の勉強をしたので、これを用いて新しい研究プロジェクトを立ち上げたいとしましょう。ところが、コンサルにはできて、研究職の立場だと逆にできないこともあるのです。例えば「社内の営業データを分析して、現場の営業員にアドバイスを出すシステムを作りたい!」と思ったとしましょう。これは研究職として実施するのはかなりハードルが高いです。

 なぜかというと、上でも述べたサイロ化と関係するのですが、営業からすれば「うちのデータで分析して、しかもダメ出しするなんて面白くない」わけです。それに「仮にやるにしても営業部門からも人をアサインしなければならない。タダでさえ忙しいんだからそんな余裕はない。もし有用だというならその根拠を示してくれ」と言われるのがオチでしょう。その根拠を示すためには「社内の営業データで分析」が必要になり堂々巡りです。

 ところが、あなたがもしコンサルという立場であれば、別にその会社の研究部門の仕事をしたって、営業部門の仕事をしたって、どちらもできますし可能性があるわけです。もっと言えば、その会社だけではなく、他の会社に対しても同じことができます。「営業データを機械学習で分析して、レコメンドを出す」なんてシステムは、業界や会社を問わずどこも興味があるはずです。

 このように、企業研究職より、コンサルとして仕事をした方が、あなたの知識やスキルを活かせる場が多いということは珍しくありません。

ベンチャーキャピタル・投資銀行・コンサルは、理系を求めている

 そして何より、ベンチャーキャピタル・投資銀行・コンサルなどの業界は、理系の優秀な人材を強く求めています。なぜなら、これらの業界は全業界を相手にしたビジネスだからです。例えば、ベンチャーキャピタルがバイオテクノロジーのベンチャーに投資しようとした時、理系の医学や生物系のバックグラウンドの知識が必要ということは容易に想像できるでしょう。

 ところが、日本の理系は技術職に就くことだけを考えている人が多く、これらの業界には見向きもしない人が多いのは残念なことです。特に博士になると企業研究職かアカポスかだけの二択で考えている人が多く、とてつもなく視野が狭くなっているのではと危惧しています。

 もちろん理系人材が求められているのは、これらの業界だけではありません。マスコミ(テレビ局、新聞社、出版社)などでも理系は活躍できるでしょう。日本のマスコミは技術がわかる人が少なく、テレビや新聞での理系関連の報道が非常に弱いのは大きな問題です。間違っていることすら結構ありますから。

 以前、医学部を卒業してテレビ局に入局した人がいましたが、その時はネット上で「医師を育てるのにどれだけお金がかかると思っているんだ!」と非難する書き込みが見られました。なぜテレビ局に入ったら医師を育てるお金が無駄になるのでしょうか? 医師の仕事は臨床医だけと思っているのでしょうか? その人の世界観があまりに陳腐すぎて、頭の中を覗いてみたいぐらいです。

 アメリカでCNNなどによく出てて有名なサンジェイ・グプタという医師がいますが、彼などは医学関連の内容を噛み砕いて正しく報道することに貢献しています。今回のコロナ禍でも、医師がマスメディアから発信する必要性はますます高まっていると言えるでしょう。

最後に

 いかがでしたでしょうか。理系の方にはくれぐれも視野狭窄に陥ることなく、技術職以外の進路も視野に入れて就職先を考えていただきたいなと思っています。

 理系の考え方や知識などが活かせるのは、技術職だけではありませんし、研究職になるよりもコンサルやベンチャーキャピタリストになったほうが研究で社会に大きなことができるという可能性も珍しくはないのですから。

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posted by 勉三 at 03:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 理系
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