最近多い「退職エントリ」に見られる共通性
ども勉三です。ネット界隈では、自身のブログで「〇〇を退職しました」という記事を投稿することが増えてきており、それを指して「退職エントリ」なるワードも生まれているぐらい、近年では認知度が高まっています。
私も他人の退職エントリを読むのは好きで、特に日系大企業を辞められた方の記事は、勉三自身の体験とも重なり、共感する部分が多いです。
さて、数十の退職エントリを読んでいく中で、前職への不満として挙げられている部分に共通点が多く、いくつかのパターンに分けられることに気づきました。今回はその共通点について挙げていきます。
社内のIT環境がクソ
これ、直接の退職理由としては挙がってこないかもしれませんが、退職エントリで不満として挙げている人がかなり多く、実は退職を考えさせる大きな要因の1つになっているのではないかと推察します。
例えば、IT系のエンジニアの方であれば、フリーで開発する際に使用するデファクトスタンダードともなっている開発ツールが、企業だと使えないことが多いのです。勉三もこれは経験があり、大企業であればソフトを1つインストールするにもいちいち申請が必要になります。また、セキュリティがガチガチに固められているので、外部のウェブサイトにうまくつながらなかったり、gitのような外部リポジトリを使うのは以ての外です。
ソフトウェア開発が本業のIT系のベンチャーでさえそうなのですから、ソフトウェア開発自体が本業でない銀行やメーカーなどでは更に制約が厳しいです。最近はAIや機械学習のブームで、いろんな企業でデータサイエンティストといったポジションを置くことが多くなっていますが、彼らがまずぶつかる壁が社内ITやセキュリティと言えるでしょう。
この真因を考えてみると、ベンチャーを含めて殆どの大企業にとっては、既存のビジネスを安定して回すかという部分が最も重要であり、その遂行を大きく妨げる「セキュリティインシデントの類は絶対に避けたい」という動機があります。これと「新しい技術を取り入れてブレークスルーを起こしたい」という動機を比べると、前者すなわち安全徹底策が勝るのは致し方のないことです。
勉三も以前いたメーカーで、「問題を起こすより、研究開発が全てストップするほうがいい」というような経営陣の発言を聞いたことがあります(ここまで直接的な表現ではないですが)。これが大企業経営陣の本音なのです。
マネージャーになるキャリアパスしかない
これも退職エントリではかなり多くみられる不満です。多くの日本企業では、「出世=管理職になってマネジメントに徹する」であり、それ以外は認められていないのです。
勉三のいたメーカーでも、一応、研究職については専門職としてのキャリアパスも作り、複線のキャリアパスを標榜していましたが、ものすごく道が狭い。99%の人は普通の管理職となり、とびぬけて業績の高い1%の人が専門職として管理職相当の職位及び給与を認められるという感じでした。
仕事をしたいと言った時に、管理職になりたいという人はあまりいないのではないかと思います。例えば学校の先生なんかがそうでしょう。先生になりたいと思っている人は、子供たちに直接教えたいという希望があって、その職業を選んでいるはずで、校長先生や教頭先生のようなマネジメントにはそれほど興味はないはずです(将来的になるならないは置いておいて)。教員志望の人に「お前はゆくゆくは現場から離れマネジメントに徹してもらうぞ」と言ったら、離れていくのではないでしょうか。今の企業でもこれと同じことが起きているわけです。
現場仕事がどんどん外注化されている
これも上の項目と重なる部分が多いかもしれません。多くの大企業では現場仕事がどんどん外注化され、社員の仕事は外注先をマネジメントすることになってしまっているのです。
例えばIT系でいえば、自分でコードを書くのが好きな人がエンジニアになったのに、「入ってみたら委託先の進捗管理だけでした」「数年間コードを書いていない」ということも多いにありえるのです。
確かに「コードを書く」というタスクは、いくらでも安く仕上げることが可能です。しかし、それは形だけの話であり、生産性や拡張性などを考えると逆に高くついたりします。そこに価値を見出さない姿勢が、現在の日本企業のITでの遅れにつながっているのではと勉三は思います。
給与が安い
当たり前なのですが要因としては、待遇は一番大きいと思っています。ただ、直接面と向かって「なんで辞めたの?」と聞かれたときに「給与が安かったから」というのは答えにくいので、別のもっともらしい理由を挙げる人が多くなり、実態よりも小さく見えてしまうのかもしれません。ですが待遇は今も昔も転職理由のナンバーワンでしょう。
これも大企業勤めの方だと「給料は世間様と比べると恵まれているが、せいぜい俺はこの程度かと思うと悲しい」といったニュアンスで書かれている方が多いですね。勉三もその気持ちよく分かります。
確かに大企業ですと、いくら薄給と言われる大手電機などでも、30歳で600〜700万、40歳で管理職になれば1000万前後は到達するはずです。日本の給与所得者の平均が400万円代であることからすれば恵まれているのは確かです。そうでない人から見れば羨ましいぐらいでしょう。
しかし勉三もそうでしたが、当の本人達からすれば不満なんですね。自分たちはもっと稼げるはずだと。そしてそれは大抵の場合は当たっています。日本の大企業は使えない社員を養うために、優秀な社員の給与を切り下げているのですから。大企業の年収に不満を抱くぐらい野心のある人であれば、外へ行けば年収が上がるのは間違いありません。勉三もメーカーから外資コンサルに移って年収は1.5倍、その翌年には2倍になりましたから。
勉三としては、給与に不満を抱く若い人たちがどんどん転職するのは、良い傾向だと思っています。結局のところ「べき論」では社会は変わりません。どんどんエンジニアなり研究者が良い待遇を求めて転職し、危機感を持った経営層がエンジニアや研究者の待遇を見直すという流れが必要でしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。退職エントリはその人の歩みや人生観が詰まっていて、読んでいて感銘を受けるものも多いです。興味ある方は「退職エントリ」などでググってみてください。
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