2018年06月20日

論理的思考力講座(9):思考のバイアス(帰国子女は仕事ができない!?)

 ども勉三です。論理的思考力講座の第9回目。今回は思考のバイアスについて取り上げたいと思います。

人は先入観ゆえに偏った見方をしてしまう

 我々は先入観を纏って生きていると言えます。そのこと自体は、例えば街に怪しそうな人がいたら近づかないように注意するだとか、有利に働く面もあるので一概に悪いことだとは言えません。しかし、議論や判断の際に先入観に影響されてしまうと、誤った非合理的な決断を下してしまうリスクもあります。

 今回取り上げるバイアスというのは、両面ある物事のどちらか一方に偏った見方や考え方をしてしまうことを言います。先入観はバイアスを引き起こす要因の1つです。例を挙げましょう。

 うちの部署に帰国子女がいるんだが、こう言っちゃなんだがアレだね。英語は達者だけど仕事は大したことが無い。バイリンガルというそうだが、小さい頃に言語がチャンポン状態になって思考力がきちんと身につかないんだろうね。

 このような考えを持っている日本人はさほど珍しくありませんが、バイアスに大きく影響された考えだと言えます。何故でしょうか?

帰国子女が他の社員より語学力以外が劣るのは当たり前

 上に挙げた論説では「帰国子女が英語以外は大したことない → 小さい頃に多言語環境で思考力の発育に悪影響が出たからだ」としていますが、まず前段の部分は客観的によく考えてみれば当たり前のことだと言えます。

 ここで、英語力以外はあなたの会社における平均以上の能力があり、英語力は海外でも仕事ができるほど非常に高い人がいたと仮定しましょう。そんな人がいたら、あなたの会社でなくもっと良い会社で働けるはずではありませんか?

 これは会社でなくとも大学などでも同じことです。入試で考えると分かりやすいでしょう。ある大学の入試が国語、数学、英語の3科目だとして、国語や数学が入学者平均レベル、英語は満点という受験生がいたとします。その人はその大学じゃなくてもっと上の大学に入れるでしょう。

 つまり、英語力というアドバンテージを活かして会社なり大学なりに入っているということは、他の能力や科目はその会社や大学の人達の平均以下である、ということは極々当たり前のことなのです。これは、「数学が圧倒的に得意な人は、他の科目の成績が同じ大学の平均より劣る傾向がある」などのように、英語でなくても他の科目に置き換えても同様です。

 このように、帰国子女が周りより英語力以外で劣るのは自然な現象といえますから、わざわざ「小さい頃に多言語環境で悪影響」という理由に帰結して結論する必要はありません。であるのにそう考えたくなる人が多いのは、「幼少期は外国語より国語が大事だ」「俺にできない英語ができるやつはムカつく」「俺より仕事ができないのに上司に気に入られている」といった様々な先入観や私情が生み出すバイアスが原因です。

 なお、補足しておきますが「帰国子女が他の能力や科目はその会社や大学の人達の平均以下である」というのは、「帰国子女の能力が劣る」とはイコールではありません。むしろ、帰国子女の平均と、日本人全体の平均をとって学力などをテストすれば、英語だけでなく全ての科目で帰国子女が上回るのは容易に想像できます。なぜなら、帰国子女は親が海外駐在などのある大企業勤めで家庭が裕福な人が多く、教育熱心であると考えられるからです。

 この例のように、バイアスに影響されずに正しく物事をとらえるには、まずはニュートラルに考えてみることが大事です。

バイリンガルが悪影響は本当か?

 もう1つ。「幼少期のバイリンガル環境が思考力に悪影響を与える」という話。日本人はそう思い込んでいる人が非常に多く、色々な場面でそういう話を聞いたことがあります。

 しかし、例えば研究論文を検索してみるとバイリンガル(あるいはより一般化してマルチリンガル)による発育への影響は、プラスに働くという論文とマイナスに働くという両方の報告があり、極めてcontroversial(注:結論が出ていないだとか論争中だとかの意味。研究者の世界ではよく使う表現)であることが分かります。数でいえば圧倒的にプラスに働くと言う報告の方が多いぐらいです。

 であるにも関わらず、日本人にはバイリンガルが悪影響を与えるという考えの人が圧倒的に多いです。日本において、逆の主張を勉三はほとんど目にしたことがありません。これも、上と同じで「英語ができるやつは気にくわない」というコンプレックスが根底にあるからでしょう。

人は自分が受け入れたい論説を信じる

 昨今、フェイクニュースという言葉がすっかり定着しましたが、フェイクニュースが広がるのも全く同じ原理といえるでしょう。人は正しいものより、自分が信じたいことを受け入れる傾向にあるものなのです。

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posted by 勉三 at 20:00 | Comment(0) | 仕事・キャリア
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