ども勉三です。AI(人工知能)について話をするとき、人を代替するかどうかという視点で議論されることが多いと感じます。しかし、AIはあくまで道具。人を代替するのではなく共存していくのが正しい使い方と言えるでしょう。
AI+人の組み合わせは、AI単独より強い
最近、将棋で「AIとプロ棋士とどちらが強いか?」という議論がよくされますが、AI単独と人単独で比較されることが殆どだと思います。しかし一番強いのは、AIと人がタッグを組んだ時です。
AIがいくら賢くなったといっても、時には人間ではありえないようなミスを犯します。有名なのは、2015年の電王戦の際の話。将棋ソフト「Selene」が永瀬拓矢六段(当時)の指した角不成を認識できず、王手放置により反則負けしてしまったというエピソードです。
桂馬や銀のような駒は成らない方がよいことも多いのですが、角や飛車は殆どの場合は成ることでメリットしかないので、角不成というのは実戦ではまず見られません。ゆえに、Seleneは高速化のために角不成を考慮しないプログラムになっていたのですが、この裏を突かれてしまったというわけです。
この時、もしソフト単独で指すのではなく、ソフトと人がタッグを組んでいればこのようなミスは回避できたでしょう。コンピュータの穴を人が補うというのは非常に強力です。実際、チェスでは元世界チャンピオンのガルリ・カスパロフ氏が「アドバンスド・チェス」という、人とコンピュータがタッグを組んで対局する競技形式を提唱していたりします。
人を代替するより、人を支援するAIの方が現実的
将棋など競技の世界では、ルールで認められていないのにコンピュータの助けを借りるとカンニングになってしまいますが、ビジネスや社会問題では人+AIは立派なソリューションになりえます。
最近は社内の業務をAI化しようと取り組んでいる企業が多いですが、その時に「ある業務や工程を完全にAIで置き換える」ことを考えている経営層の方が多くみられます。しかし、例えば自動車の運転1つ取ってみても、人がこれまでやってきたことを完全に自動化するというのは技術的にハードルが高いことが多いのです。
これに対して勉三がクライアントによく説明する喩え話は、「自動運転ではなくカーナビをまずは目指してみませんか?」というものです。自動運転を実装するのは難しくても、カーナビであれば比較的簡単に実装できます。カーナビは人間を完全に代替するものではありません。依然として運転自体は人間が行う必要があります。しかし、だからといってカーナビが無意味だとは誰も思わないでしょう。
これと同じで、例えば営業戦略の策定でAIを活用したいというのがテーマであれば、全てをAIに置き換えるという自動運転型のアプローチは難しいですが、AIが情報を分かりやすい形で集約し、それを人が使って戦略を立てるというカーナビ型のアプローチであればそれほど難しくはありません。
車の運転であれば既にカーナビは当たり前のものとなっていますが、多くの業務ではカーナビはおろか地図すら無いということも多々あります。そんな状況では、一足飛びに自動運転を目指す必要はなく、まずはカーナビを作ってあげるだけでも大きく効率が改善するものなのです。