2018年05月07日

論理的思考力講座(7):帰納と演繹

 ども勉三です。帰納(きのう)と演繹(えんえき)という言葉は皆さん一度は耳にされたことがあるかと思いますが、違いをすぐに説明しろと言われたら難しいのではないでしょうか。今回はこの2つの違いを分かりやすく説明したいと思います。

帰納と演繹とは

 まずは定義ですが、教科書や辞書の定義を丸暗記するよりは、絵で覚えてしまった方が早いと思います。下の図をご覧ください。帰納は実例を集めてきてそこから法則を導くもの。これに対して演繹は既に知られている法則を組み合わせて新しい法則を導いたり実例を予測することを意味します。

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 例えば、「ある数が3で割り切れるかどうか、実際に割り算をするよりも簡単に確かめる方法が無いか」という課題があったとしましょう。まずは3で割り切れる数の実例を沢山集めてみるのです。3、6、9、12、15、18、21、24… といった具合に。そしてその数を眺めてみて何か法則性がないか考えます。すると「3で割り切れる数は各桁を足し合わせた値も3で割り切れるのではないか」という法則が導き出されます。これが帰納的アプローチです。

 しかし、この法則はあくまでその段階では仮説に過ぎません。3で割り切れる数を何億個集めてきたとしても、絶対に成り立つ法則であることを示したことにはなりません。数学ではここから証明が必要になります。その証明が演繹に相当します。

実社会では演繹よりも帰納が証明になる

 一方、数学の世界ではなく実社会では、演繹ではなく帰納をもって証明と見なされるケースが多いといえます。これは、数学とは違って純粋にロジックの積み重ねだけによる演繹による証明が難しいためです。

 例を挙げましょう。一時期「水素水」というものが話題になりました。活性水素が人体に有毒な活性酸素を除去してくれるので美容や健康にいいというのが理由です。これに対して「仮に活性水素が活性酸素を除去するとしても、飲んでも血中に殆ど取り込まれないから意味がない」とか「活性水素の半減期は非常に短いため効果は期待できない」だとか色々な方が反論しました。

 この反論は演繹的なアプローチです。既知の法則を組み合わせて「水素水は意味がないだろう」という新たな法則を導こうとしているのです。しかし、この論法では水素水の効果があることもないことも共に証明することは不可能です。なぜなら、人体の仕組みは完全解明されておらず、そこで起きる反応も完全にシミュレートすることはできません。いわばそういったブラックボックスに対して演繹的アプローチだけでは限界があるのです。

 それよりもインパクトがあるのは臨床試験という帰納的アプローチです。つまり、実際に人に水または水素水を飲んでもらい、その後の各種パラメータを測定し、群間で違いが出るかを示せばいいのです。これは医薬品の承認と全く同じ考え方です(医薬品の場合は効果が無いことではなく効果があることを示す)。もちろん、臨床試験にしても数学のような厳密な証明というわけにはいきません。しかし実社会では100%ではなくてもある程度成り立つのであれば、その法則には価値がありますので、帰納的アプローチで十分なことが多いのです。

用語が分かりにくいので一般向けのプレゼンでは使わない方が吉?

 このように帰納と演繹は非常に重要な概念で、それほど難しい概念というわけでもないのですが、一般向けのプレゼンなどで使うと難しいという印象をもたれかねないので、使用するなとは言いませんが注意が必要です。

 コンサル業界では帰納と演繹という言葉もよく使われますが、これに類似した概念として「ボトムアップ」と「トップダウン」という言葉もよく使われます。まさに上で挙げた図で、帰納が下から上(ボトムアップ)に、演繹が上から下(トップダウン)になっていることに由来した呼び方です。正確なデータが入手できないときに、既知の情報から推測して埋める際にトップダウンといったり、事例を集めて仮説構築する際にボトムアップといった表現がなされます。一般向けにもこちらの方が分かりやすいこともありますので、言い換えを検討してみるのもいいかもしれません。

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posted by 勉三 at 20:00 | Comment(0) | 仕事・キャリア
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