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2017年12月09日

全社会人の必読書、松下幸之助「道をひらく」

 古今東西、ビジネスの名著は数多くあれど、多くの人が必読書として挙げるのが「道をひらく」(松下 幸之助 著、PHP出版)です。著者は言うまでもなく、丁稚奉公から身を起こし、現在のパナソニックグループ(旧松下電器産業)を一代で築き上げた経営の神様こと松下幸之助氏。本書は彼の随想集としてまとめられたもので、見開き2ページに1つのテーマを綴ったものが121編から構成されています。どのテーマも簡潔ですぐに読めてしまいますが、いずれも含蓄に富み、時は経てど現在の我々にも参考になる部分は大きいです。

 今回は勉三が感銘を受けた箇所を引用とともに紹介したいと思います。

ノレンわけ

 昔は、お店に何年かつとめて番頭さんになったら、やがてノレンをわけてもらって、独立して店をもったものである。今でもそういうことが、一部で行われているかもしれないけれど、それでも世の中はずいぶん変わった。生産も販売もしだいに大規模になって、店の組織も会社になって、だからもうノレンわけなどというものはすっかり影をひそめてしまった。つまり、独立して店を持つということがむつかしくなって、会社の一員として終生そこで働くという形が多くなったのである。

 世の中の進歩とともに、大規模な生産販売に移行してゆくのも自然の姿であろう。だからこれもまたやむを得ないことかもしれないが、しかしノレンわけによって、独立の営みをはじめるというあの自主的な心がまえまでも失ってしまいたくない。会社の一員であっても、実はそのなかで、それぞれの勤務の成果によって、それぞれにノレンわけをしてもらっているのである。だからみんなその仕事では独立の主人公なのである。

 そんな気持ちで自主的な心がまえだけは、終生失わないようにしたいものである。

 日本では起業家精神を持った若者が少ないと言われることもありますが、振り返ってみれば豊田佐吉氏や松下幸之助氏のように身一つで企業を起こした人たちは沢山いたのです。むしろ昔の人の方がその辺の発想は自由だったのかもしれません。

 現代だと、いかにいい大学に行って、親が知っているような安定した一流企業に入って、定年まで勤めあげることが模範的な人生とされていますが、昔の人達のように「いつかは独立してやる」という気概は忘れないようにしたいものです。結果として独立するしないにせよ、独立を考えながら仕事に取り組むのと、単に対価を受け取る代わりに時間を提供するものとして仕事に取り組むのとでは、当事者意識が全然違ってきますから。

乱を忘れず

 景気がよくて、生活も豊かで、こんな姿がいつまでもつづけば、まことに結構である。しかし、おたがい人生には、雨の日もあれば、風の日もある。

 景気にしても好況のときもあれば、不況のときもある。いつも平和な、いつも豊かなときばかりとは限らない。それが人生である。世の中である。

 ところが、世の中が落ちついて、ある程度景気もよくなり、生活も向上して、いわゆる安穏な毎日がつづくようになると、いつしか、この世の中の実体を忘れ、人生のあり方を忘れて、日を送る。

 それですむなら、それでもよかろう。しかしいつかは台風が来、あるいは不景気の波が立つ。そのときになっても、はたしてきのうに変わらぬ泰然の心境でいられるか、どうか。

 いついかなる変事にあおうとも、つねにそれに対処してゆけるように、かねて平時から備えておく心がまえがほしいもの。「治にいて乱を忘れず」である。

 それがわかっていながら、しかもおたがいに今ひとつ充分でないのも、これも人間の一つの弱点であろうか。

 この「治にいて乱を忘れず」という格言。「道をひらく」では何度か登場しますが、勉三も大好きな言葉です。我々人間はどうしても今現在のことしか考えられず、それが未来もずっと続くものだと勝手に思ってしまう傾向があります。人生設計をするにしても、30年後、40年後も今と同じ社会がそのまま続くと思ってしまう。また、学校を卒業して会社に入ってしばらく働く。するとその数年間が今後もずっとそのまま延長されるように続いていく。そういった錯覚をしてしまうのです。

 しかし世の中の実態はそうではありません。いかに業績好調だった会社であっても、新卒で入社して定年退職するまで何も起こらないということの方が珍しいでしょう。ずっと業績が良かった頃の感覚のままでいて、あぐらをかいていると、事業縮小でリストラされる頃になってようやく焦り始めるという事になりかねません。好調な時こそ次の備えをきちんと考えられるようになりたいものです。

今こそ昔の日本の経営者に学ぼう

 いかがでしたでしょうか。最近はユニクロやソフトバンク、楽天などを除くと、日本企業に勢いがなく、どうしてもアップル社の故スティーブ・ジョブズ氏だとか、アマゾンのジェフ・ベゾス氏といった海外の経営者に目がいきがちです。しかし、日本だって偉大な経営者の輩出では負けてはいません。特に江戸時代や戦前には独立心をもった起業家が沢山現れました。時代は変わっても人間の営みはさほど変わってはいません。例えばCSR(企業の社会的責任)なんて概念は江戸時代から当たり前でした。何も新しくはないのです。未来は古典の中にありです。過去を振り返ることで未来が見えてくるのではと思います。

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posted by 勉三 at 16:09 | Comment(0) | 書評
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