2018年06月23日

iPS細胞がオワコン化している!?日本科学界のタブーに迫る

 ども勉三です。2012年、山中伸弥教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)の業績によりノーベル医学生理学賞を受賞したことは、科学にあまり詳しくない方でもご存知かと思います。その後、衰退する日本の科学研究において世界をリードする数少ない分野として、政府や大学は国策としてiPS細胞に研究費を注ぎこんできました。

 ところが、このiPS細胞が近年急速に「オワコン化」(友人談)していることはご存知でしょうか? 勉三の友人に某大学で再生医療の研究をしている人がいるのですが、代わりに台頭してきているのがES細胞(胚性幹細胞)らしいのです。そして、その事に殆どの研究者は気づきながらも巨額の研究費をかけて国策として進めてきたiPS細胞を否定することができず、次第に再生医療分野において日本が取り残されているらしいのです。

 今回はその友人から聞いた話を再構成して分かりやすくお伝えしたいと思います。なお、勉三は再生医療の専門家というわけではないので、細かい間違いなどはご容赦頂ければと思います。

ES細胞とiPS細胞の違いとは

 ES細胞自体は新しい概念や技術ではありません。iPS細胞が登場する遥か以前から存在したものです。基本的にはどちらも体内のあらゆる細胞に分化することができる、すなわち血液細胞や肝細胞などに分化させることができるという点では共通です。

 しかし、ES細胞は動物の発生初期の胚(胎児になる細胞)から採取して作られるため、倫理的な面で問題がありました。また、既に大人になっている人からは採取できないので、臓器移植などに使う際にも拒絶反応などの問題がありました。

 そこで登場したのがiPS細胞です。iPS細胞は、大人から採取した皮膚細胞などを用いて、強制的に遺伝子を発現させることで、ES細胞のように再び分化能(他の色々な細胞に分化できる能力)を獲得させた細胞の事です。

 ES細胞と違って、iPS細胞は大人の体細胞から得ることができるので、ES細胞のような倫理的問題はありません。また、自分の細胞から作ったiPS細胞を心臓や腎臓などの細胞に分化させれば、拒絶反応なしで移植できるので夢の技術と期待されました。

iPS細胞は期待してたほど夢の技術ではなかった

 ところが、期待されていたほどiPS細胞で何でもかんでも臓器が作れる訳ではないことが分かってきました。比較的構造が単純で分化させやすい組織であればともかく、腎臓や肝臓といった複雑な組織はとてもじゃないが今の技術では作れないという現実が次第に明らかになってきたのです。

 もちろん、この問題はES細胞であっても本質的には同じことです。ただ、iPS細胞は最初に人為的な操作を加えているため、考察が難しくなります。何かよく分からない操作をして作った細胞に、さらに何かよく分からない操作をして色んな組織の細胞を作るというのは、そのプロセスを研究するには、あまりに複雑すぎると言えます。

 その点、ES細胞は元々多能性を有しているので、操作が1つ少ないわけです。そのため、近年はあまりにブラックボックス化していてよく分からないiPS細胞よりも、よりシンプルなES細胞を使って研究する流れがどんどん加速しているということなのです。

 また、以前は倫理的な観点から米国でのES細胞の利用が規制されていたのですが、それが近年緩和されたこともES細胞の再浮上につながったようです。

日本では何故か誰もいわないが世界では常識

 ところが、この「誰でも知っているiPS細胞オワコン化の事実」を、日本で取り上げている人は非常に少ないようです。この記事を書くにあたって勉三もネットで調べてみましたが全く見つかりませんでした。

 代わりに英語で検索してみると簡単にヒットしました。世界トップクラスの科学ジャーナルであるNatureの記事 "How human embryonic stem cells sparked a revolution"(ヒトES細胞はいかにして革命を引き起こしたか)(2018年3月20日)から引用して紹介したいと思います。

 多くの人が、研究の世界ではiPS細胞はすぐにES細胞の役割に取って代わるだろうと考えていた。しかし、そうはならなかった。その後もES細胞に関する論文数は急速に増えつづけている。この理由の1つとしては、研究者がiPS細胞と比較するためのゴールデンスタンダードとしてES細胞を用いているということがある。また別の理由は、今日においても、iPS細胞の安全性について疑問を抱く人がいるためだ。(中略)

 臨床においても、多くの人はiPS細胞がES細胞を最終的には上回るだろうと考えていた。iPS細胞の利点の1つとして、患者と同じDNAを持つ細胞や組織を作ることができるため、移植時の拒絶反応が避けられるという点がある。しかし、1型糖尿病を含む殆どの遺伝病については、患者本人から作ったiPS細胞は問題を引き起こす変異を含んでおり、治療に使うためには変異を修正しないといけないことが分かった。

 また、これとは別にコストの問題もある。iPS細胞を臨床で使うためには百万ドル(約1億円)が必要になるとJeanne Loring氏は語る。このコストを考えると、現時点では患者から採取したiPS細胞を治療に使うことは現実的には困難である。しかし、Loring氏は将来コストが下がり、iPS細胞がパーキンソン病の治療に使えることを期待する。

 これまでのところ、研究者たちはiPS細胞を使った臨床試験を1つしか開始できていない。理研の高橋政代氏が率いるチームが、加齢黄斑変性の治療を目指していたが2014年に中断された。その理由として、当初は患者由来のiPS細胞を使おうとしていたが、手法を簡単にし患者本人でなく別のドナー由来のiPS細胞を使うように試験を変更したためである。臨床試験は2017年に再開されたが、今年1月に別の障害に遭遇してしまった。というのも、移植を受けた被験者の眼に膜ができてしまい、それを取り除かなければならなくなったからである。

 他方、ES細胞の加齢黄斑変性への適用例は多く存在する。米国、英国、韓国、中国、イスラエルで少なくとも6つの臨床試験がこれまでに実施されてきた。3月19日、Pete Coffey氏らの研究チームは、ES細胞から作られた細胞片を2名の被検者の網膜に移植した試験の結果を公表した。移植から1年経過後、ゆっくりとではあるが、被検者は文字を読めるまでに視力を回復したとのことである。

 実際、iPS研究の総本山である京大iPS細胞研究所なども、表立ってiPS細胞を否定はできないものの、実はしれっとES細胞の研究にシフトしているそうです。

そうはいっても日本人としてはiPS細胞にも期待したい

 いかがでしたでしょうか。ただ、そうはいっても日本人として、勉三はiPS細胞に頑張ってほしいという期待が強いです。国策だからというのではなく、ES細胞とiPS細胞のお互いの良い点を活かして柔軟に再生医療の研究を進めて頂きたいと切に願っています。

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posted by 勉三 at 08:00 | Comment(0) | 時事

2018年06月22日

サッカー漫画の名作「キャプテン翼」に学ぶニッチ戦略

世界中に影響を与えた「キャプテン翼」

 ども勉三です。W杯始まりましたね! 監督が突然辞めたり負けが続いたりで色々と心配されていた日本代表ですが、コロンビア戦では予想外の展開で勝ち点3を獲得し、白星発進となりました。

 さて、サッカー番組も増えてきていますが、そんな中でよく取り上げられるのが「キャプテン翼」。同作が日本で一世を風靡したのは誰もが知るところですが、海外でも愛されており、世界の名だたるプレイヤー達から「キャプテン翼がきっかけでサッカーを始めた」と引き合いに出されることもしばしば。

作者はサッカーを知らずに書いてた!?

 さて、そんな「キャプテン翼」ですが、作者の高橋陽一先生はなんとサッカーのことはあまり詳しくない状態で連載をスタートされたそうです。もともと、高橋先生は野球少年で、漫画家になった際も野球漫画を描くことを最初は考えていました。

 しかし、当時の編集から「野球漫画は沢山あるから、サッカーの方が競争相手が少なくていいんじゃないか」とアドバイスを受けたとのこと。今からすれば信じられないことですが、当時は野球が圧倒的で、サッカーはまだプロリーグすらなかったマイナー競技です。いわば今風にいえば完全にニッチ市場だったのです。

高橋先生のニッチ戦略

 もし、高橋先生が野球漫画を描いていたとしたら、これほど国民的漫画家にはなれなかったかもしれません。実際、高橋先生は野球漫画も描いていますがキャプテン翼ほどは認知されていません。このことは漫画家でない我々にとっても大事なことを教えてくれています。それは「競争の少ないところで戦え」という原則。

 ややもすれば我々は、当時で言う野球漫画のような規模は大きいが飽和しつつある市場で戦おうとする傾向があります。しかし、そういった市場で上位に入るには運と完成度の両方で非常に高いレベルが求められます。それも1つの戦略ではあるのですが、もう1つ「ニッチで戦う」という戦略があることも忘れてはいけません。

 また、いくらニッチだからといって、マイナー過ぎても収穫が期待できません。サッカーというメジャー過ぎずマイナーすぎずの丁度良い題材を選んだこともヒットの理由でしょう。また、そこまで高橋先生は考えていなかったかもしれませんが、10年後、20年後のことを考えると、サッカーという題材への先行投資は正解でした。なにせ今だに当時の作品でコラボの仕事があるわけですからね。

キャプテン翼は脚本的にもお手本のような作品

 現代では、ややもすると「こんなプレーありえない」だとかネタ扱いされることもあるキャプテン翼ですが、素直に小学生編を読めば、脚本の巧さに驚くはずです。大空翼、若林源三、岬太郎の3人の関係なんて最高ですし、家庭は貧しいが優勝すれば名門校に特待生で入学できる条件を提示され奮闘と葛藤を繰り返す日向小次郎、そして大会後のロベルト本郷との別れも漫画界屈指の名シーンでしょう。

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posted by 勉三 at 20:00 | Comment(0) | 時事

2018年06月20日

論理的思考力講座(9):思考のバイアス(帰国子女は仕事ができない!?)

 ども勉三です。論理的思考力講座の第9回目。今回は思考のバイアスについて取り上げたいと思います。

人は先入観ゆえに偏った見方をしてしまう

 我々は先入観を纏って生きていると言えます。そのこと自体は、例えば街に怪しそうな人がいたら近づかないように注意するだとか、有利に働く面もあるので一概に悪いことだとは言えません。しかし、議論や判断の際に先入観に影響されてしまうと、誤った非合理的な決断を下してしまうリスクもあります。

 今回取り上げるバイアスというのは、両面ある物事のどちらか一方に偏った見方や考え方をしてしまうことを言います。先入観はバイアスを引き起こす要因の1つです。例を挙げましょう。

 うちの部署に帰国子女がいるんだが、こう言っちゃなんだがアレだね。英語は達者だけど仕事は大したことが無い。バイリンガルというそうだが、小さい頃に言語がチャンポン状態になって思考力がきちんと身につかないんだろうね。

 このような考えを持っている日本人はさほど珍しくありませんが、バイアスに大きく影響された考えだと言えます。何故でしょうか?

帰国子女が他の社員より語学力以外が劣るのは当たり前

 上に挙げた論説では「帰国子女が英語以外は大したことない → 小さい頃に多言語環境で思考力の発育に悪影響が出たからだ」としていますが、まず前段の部分は客観的によく考えてみれば当たり前のことだと言えます。

 ここで、英語力以外はあなたの会社における平均以上の能力があり、英語力は海外でも仕事ができるほど非常に高い人がいたと仮定しましょう。そんな人がいたら、あなたの会社でなくもっと良い会社で働けるはずではありませんか?

 これは会社でなくとも大学などでも同じことです。入試で考えると分かりやすいでしょう。ある大学の入試が国語、数学、英語の3科目だとして、国語や数学が入学者平均レベル、英語は満点という受験生がいたとします。その人はその大学じゃなくてもっと上の大学に入れるでしょう。

 つまり、英語力というアドバンテージを活かして会社なり大学なりに入っているということは、他の能力や科目はその会社や大学の人達の平均以下である、ということは極々当たり前のことなのです。これは、「数学が圧倒的に得意な人は、他の科目の成績が同じ大学の平均より劣る傾向がある」などのように、英語でなくても他の科目に置き換えても同様です。

 このように、帰国子女が周りより英語力以外で劣るのは自然な現象といえますから、わざわざ「小さい頃に多言語環境で悪影響」という理由に帰結して結論する必要はありません。であるのにそう考えたくなる人が多いのは、「幼少期は外国語より国語が大事だ」「俺にできない英語ができるやつはムカつく」「俺より仕事ができないのに上司に気に入られている」といった様々な先入観や私情が生み出すバイアスが原因です。

 なお、補足しておきますが「帰国子女が他の能力や科目はその会社や大学の人達の平均以下である」というのは、「帰国子女の能力が劣る」とはイコールではありません。むしろ、帰国子女の平均と、日本人全体の平均をとって学力などをテストすれば、英語だけでなく全ての科目で帰国子女が上回るのは容易に想像できます。なぜなら、帰国子女は親が海外駐在などのある大企業勤めで家庭が裕福な人が多く、教育熱心であると考えられるからです。

 この例のように、バイアスに影響されずに正しく物事をとらえるには、まずはニュートラルに考えてみることが大事です。

バイリンガルが悪影響は本当か?

 もう1つ。「幼少期のバイリンガル環境が思考力に悪影響を与える」という話。日本人はそう思い込んでいる人が非常に多く、色々な場面でそういう話を聞いたことがあります。

 しかし、例えば研究論文を検索してみるとバイリンガル(あるいはより一般化してマルチリンガル)による発育への影響は、プラスに働くという論文とマイナスに働くという両方の報告があり、極めてcontroversial(注:結論が出ていないだとか論争中だとかの意味。研究者の世界ではよく使う表現)であることが分かります。数でいえば圧倒的にプラスに働くと言う報告の方が多いぐらいです。

 であるにも関わらず、日本人にはバイリンガルが悪影響を与えるという考えの人が圧倒的に多いです。日本において、逆の主張を勉三はほとんど目にしたことがありません。これも、上と同じで「英語ができるやつは気にくわない」というコンプレックスが根底にあるからでしょう。

人は自分が受け入れたい論説を信じる

 昨今、フェイクニュースという言葉がすっかり定着しましたが、フェイクニュースが広がるのも全く同じ原理といえるでしょう。人は正しいものより、自分が信じたいことを受け入れる傾向にあるものなのです。

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posted by 勉三 at 20:00 | Comment(0) | 仕事・キャリア